初優勝、そして大関昇進――栃ノ心を
栄光に導いた師匠のアドバイス

  • 武田葉月●取材・構成 text&photo by Takeda Hazuki

 大相撲は2カ月に一度、本場所のほかにも地方巡業があって、1週間の休みを取るなど、1年に1度あればいいほう。ですから、完全な"遠距離恋愛"でした。その分、「いつかニノを日本に呼んで、一緒に暮らしたい」という思いが、私の中ではどんどん募っていましたね。

 そして2015年6月、幕内に復帰して再び安定した成績を残せるようになって、私はニノと結婚しました。故郷で入籍し、ふたりの日本での生活が始まりました。私ががんばらなければいけない理由が、さらにひとつ増えました。

 しかしながら、4場所連続休場の原因となったヒザのケガは、その後も私をたびたび苦しめました。2017年初場所には、途中休場を強いられました。

 それから、一旦は回復したのですが、秋場所(9月場所)の頃から再び調子が悪くなり、10月の秋巡業は治療のために欠場。ヒザにたまっていた水を抜いて、九州場所前の部屋の合宿では、実戦の稽古をこなすまでには至らず、ウォーキングを繰り返す日々でした。

 まさしく実戦の勘がないまま、臨んだ九州場所。皆勤できるかどうかもわかりませんでしたが、9勝6敗の成績を収めることができました。

 とはいえ、その後の九州巡業でも稽古はあまりできず、不安を抱えたまま、新たな年を迎えることになりました。

 2018年初場所を前にしても、「(ヒザは)大丈夫かなぁ......」という不安な思いのほうが大きかったですね。ところが、場所が始まるちょっと前から、急にヒザの動きがよくなったんです。

 すると、初日から6連勝。抱えていた不安が少し小さくなって、そこからさらに波に乗っていくことができました。9日目には170kgを超える御嶽海をつり出して、11日目には苦手な宝富士を相手に白星。これが、大きなポイントでしたね。

2 / 5

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る