2020.01.29

思い出深い激闘。2004年アテネ五輪
「体操ニッポン」復活の名場面

  • 折山淑美●文 text by Oriyama Toshimi
  • photo by PHOTO KISHIMOTO

 最後の鉄棒を残したこの時点でルーマニアが144.422点でトップに立ち、日本は144.359点で2位。平行棒で追い上げてきたアメリカが、144.297点の3位。4位の韓国は1点以上の差が開いていたため、メダルは0.125点差で競り合うこの3カ国が確実になった。あとは、どの国がどの色のメダルを獲得するかの争いだ。

 鉄棒は、予選で米田が全体トップの9.800点を出し、ほかの4人も9.7点台を出して1位になっている日本の得意種目だ。それに対して、アメリカは予選5位、ルーマニアは7位に終わっていた。日本チームの加納実監督が「ルーマニアは落ちてくるだろうと思っていた」と言うように、最初に演技をしたルーマニアはマリウス・ウルジカが9.775点を出したものの、続くふたりは8.912点と9.275点。6種目合計では172.384点に終わり、優勝争いから脱落した。

 次のアメリカは、加納監督も強さを認めている強豪チームだ。この日は爆発的な力を発揮するには至らなかったものの、3人が9.7点台を並べてくる力は十分にあった。案の定、モーガン・ハムは攻めの演技を見せて予選を上回る9.762点を出してきた。だが、前年の世界選手権個人総合優勝のポール・ハムとブレット・マクルアは、共に予選では10.00だった構成の価値点を9.70点に落としてくる安全策を取り、9.4点台の演技で合計を172.933点にした。これで、アメリカの銀メダル以上が確定した。

 先に演技を終えたアメリカを日本が上回るためには、3人が平均して9.525点を出さなければいけない状況だった。離れ業もある鉄棒だからこそ、ひとりでも落下などのミスをすれば、金メダルが遠ざかってしまう。