八百長疑惑で解雇処分を受けた蒼国来。復帰までの2年間の深い苦悩 (3ページ目)

  • 武田葉月●取材・構成 text&photo by Takeda Hazuki

 ラグビー部でのトレーニングは半年くらい続けました。ところが、トレーニングのやり過ぎで足が腫れてしまい、治るまで1カ月近くを要することになってしまって......。一旦、トレーニングを中断せざるを得なくなったのです。その際、親方には「やり過ぎだ!」と叱られましたよ(笑)。

 私の解雇が「無効」という判断が出たのは、2013年3月のことです。そこから、相撲協会との話し合いを経て、7月の名古屋場所(7月場所)から土俵に復帰できることが決まりました。

 荒汐部屋に戻って、2年ぶりにまわしをつけました。この2年の間、私は相撲の稽古は一切していません。トレーニングをしていたとはいえ、さすがに両足をはじめとして、全身の筋肉が落ちている感覚がありました。

 周囲からの評価も厳しくて、「2年も稽古していないんだから、蒼国来は三段目くらいの力しか残っていないんじゃないか?」といった声も聞かれました......。

 自分の中では、「何とかもう一度、関取でがんばれるんじゃないか?」と思っていましたが、やっぱり現実は厳しかったです。復帰場所から3場所連続で負け越して、2014年初場所(1月場所)では十両の下のほうまで番付を下げてしまいます。

 でも、そこから私は這い上がりました。夏場所(5月場所)で再入幕し、自分の力で幕内の座をつかんだのです。

 休んでいた2年は、自分の人生の中で、ものすごく勉強になった時間でした。相撲が強くなるだけじゃなく、人間として大切なことを教えてもらって、心を激しく打たれるほど、いろいろな人に応援してもらったことは、私の財産です。

 今度は、私が相撲で恩返しをする番だと思いました。

 相撲勘も少しずつ蘇ってきた私は、2017年初場所、幕内の土俵で12勝を挙げる大勝ち。この場所は15日間、本当に気持ちよく相撲が取れました。そして、初めての技能賞受賞というオマケまでついてきました。

「オレだって、技能賞なんてもらったことないんだぞ。三賞の中でも、獲りたくでも獲れない賞だからな」

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