東京五輪の切符は男女残り1枠。リードW杯で見えた代表候補の現在地 (3ページ目)

  • 津金壱郎●取材・文 text by Tsugane Ichiro
  • 佐野美樹●撮影 photo by Sano Miki


 一方で今大会の女子は、キム・ジャーイン(韓国)がW杯リードで通算29回目の優勝を果たし、2位には世界選手権女王のヤーニャ・ガンブレット(スロベニア)、3位には今季のW杯リード女王となった韓国の16歳ソ・チェヒョン。そして4位には、五輪代表に内定している野口啓代が入った。

 この4選手との優勝争いに加わると目されていた森秋彩は準決勝、クリップを決められた範囲内でしないまま登ったため、高度20でアテンプト終了となり20位。決勝進出を逃した競技後は、しばらくひざ小僧を抱えたまま落ち込んでいた。

「オブザベ(下見)の時は確認していたのに、登り始めたら集中しすぎて忘れてしまった」と唇を噛んだが、自身の"登る"というパフォーマンス自体には手応えを得ていた。

「世界選手権後は、五輪予選に向けてボルダリングやスピードの練習もやっていて。リードだけの練習をしていた時よりもW杯リードで結果が出なかったけど、この大会は登ることだけなら満足できるものを出せました。決勝に行けなくて悔しいけれど、五輪予選では同じミスをしないようにしたいと思います」

 ここで得た教訓を五輪予選で生かそうと必死に前を向いた森と同じく、伊藤ふたばも準決勝敗退の12位。しかし、スピードとボルダリングを得意にする彼女の場合は、今大会のパフォーマンスは納得できるものだったようだ。

 伊藤は準決勝を高度28でフォールしたが、準決勝6位から10位までの選手の記録は高度28+。決勝進出ライン目前に迫れたことで、世界選手権後のトレーニングに成果を見いだしていた。

 W杯シーズンが終わり、多くの選手がオフモードへと移行するなか、春先からボルダリング、スピード、リードの3種目でW杯を戦いながら夏には世界選手権に挑んできた彼らのシーズン終了は、あと1カ月後。長かった今シーズンを笑って振り返えられるかは、そこで決まる――。

3 / 3

関連記事

キーワード

このページのトップに戻る