横綱・鶴竜の転機。「弱い自分を吹っ切ることができた」瞬間とは? (3ページ目)

  • 武田葉月●取材・構成 text&photo by Takeda Hazuki


ケガと戦いながら、横綱として奮闘を続ける鶴竜ケガと戦いながら、横綱として奮闘を続ける鶴竜 以来、私の土俵人生はケガとの戦いが続いています。2018年に入り、春場所、夏場所(5月場所)と優勝。5回の優勝を果たしたところで、今度はヒザやかかとの負傷。満を持して臨んだ先日の名古屋場所(7月場所)前には腰痛を発症......。

 でも、ちょうどその頃、女子レスリング世界選手権の代表選考プレーオフの試合があり、川井梨紗子選手が伊調馨選手を破るというシーンを、病院から帰る車の中で見たんです。

 勝った川井選手がインタビューで、「(今日は勝ちましたが)まだ、ここで終わりじゃない。目標がぶれないように、もっともっと練習をがんばりたい」と言っていたんですね。

 なるほど......こういう考え方もあるんだなぁ。(アスリートは)みんなこういうことを考えるんだなぁ。自分もそうだなぁ、と。自分自身がつらい時って、そういう言葉が心にスーッと入ってくるんですよね。

 私自身、スポーツの世界に身を置いていますが、この人を目標にするとか、尊敬しているとかはないんですよ。相撲の世界に入ってから、いろいろと勉強して、これからも自分で挑戦していくというか、日々成長していく......と思っています。ただ、16歳で日本にやってきて、34歳になる自分はまったく想像できなかったですね(笑)。

 さすがにこの年齢になると、5年先のことを想定するのは難しい。だから今思うのは、目の前の目標に向かって、ひとつひとつ集中してやっていく、というところでしょうか。

 最後になりましたが、9月16日、私が16歳から師匠と仰いできた井筒親方(元関脇・逆鉾)が天国に旅立たれました。葬儀が終わった今でも、親方は部屋のどこかにいるんじゃないか? と、信じられない気持ちでいます。

 私のことを期待してくれて、愛してくれた親方。井筒部屋はなくなりましたが、親方から教わったことを胸に、これからも相撲道に精進していきたいと思っています。

(おわり)

鶴竜力三郎(かくりゅう・りきさぶろう)
第71代横綱。本名:マンガラジャラブ・アナンダ。1985年8月10日生まれ。モンゴル出身。得意技は右四つ、下手投げ。華麗な技と穏やかな人柄で、年輩の好角家から若い女性ファンまで幅広い人気を誇る。

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