2019.09.08

鶴竜にモンゴル相撲の経験ナシ。
それでも手紙を送り日本に売り込んだ

  • 武田葉月●取材・構成 text&photo by Takeda Hazuki

 日本の相撲に興味を持ったのは、モンゴルのテレビで旭鷲山関や旭天鵬関(現・友綱親方)の活躍を見るようになってからです。単純に「カッコいいなぁ~」と感じて、自分もやってみたいと思ったんです。

 今は大相撲で活躍するモンゴル人力士が多いから、「やっぱりモンゴル人って、みんな、子どもの頃からモンゴル相撲をやっているんでしょう?」とか聞かれることがあるんですけど、そういうわけでもないんですよ。

 たしかに白鵬関のお父さんはモンゴル相撲の横綱だし、朝青龍関や一昨年亡くなった時天空関のお父さんもモンゴル相撲の強い人で、そんな父親の影響を受けて、みなさん子どもの頃に格闘技の道場なんかに通っていたようですが、私の場合は、モンゴル相撲の経験はまったくナシですから(笑)。

 15歳の時かな? 日本の相撲部屋の親方がモンゴルに来て、モンゴル相撲大会を開くという話があったんです。今思えば、八角親方(現・理事長)だったんですが、たくさんの少年が集まって予選をやって、最終選考に残ったのが、(のちに大相撲入りした)光龍(元・幕内)、保志光(元・十両)、保志桜(元・幕下)の3人。私はあえなく予選落ちでした。

 相撲の経験がないにせよ、予選落ちはショックでしたし、強かった3人が日本に行ったという話を聞いて、私の中で「力士になりたい」という思いが強くなったんです。だけど、父がモンゴル相撲をやっていたわけでもないから、どんなルートで力士になれるか、という情報が伝わってこないんですよ。今みたいにインターネットが発達していたわけでもないですしね。

 それで困っていたら、父の勤務先の人が日本の相撲雑誌を送ってくれたんです。その人は大学の日本語の教授だったので、その人に相談しながら、雑誌の中にあった2カ所の住所に「入門したい」という内容の手紙を送ったんです。

 その2通のうちの1通を相撲記者クラブの人が読んでくれたようなのですが、「ここは相撲部屋じゃないから、入門させたりすることはできません」みたいな手紙が来て……。「そっか、ダメか……」と思っていたら、いきなりウランバートルの自宅に電話がかかってきたんですよ。

(つづく)

鶴竜力三郎(かくりゅう・りきさぶろう)
第71代横綱。本名:マンガラジャラブ・アナンダ。1985年8月10日生まれ。モンゴル出身。井筒部屋所属。得意技は右四つ、下手投げ。華麗な技と穏やかな人柄で、年輩の好角家から若い女性ファンまで幅広い人気を誇る。

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