桃田賢斗の国際大会勝率は約9割。東京五輪へ誰が相手でも、必ず勝つ (3ページ目)

  • 平野貴也●文 text by Hirano Takaya
  • photo by AP/AFLO

 そのため、選手や関係者も各自、会場内でスペースを見つけようと、いろいろなところにいた。報道陣が取材エリアに入る途中の通路で、08年、12年五輪連覇のレジェンドである林丹(リン・ダン=中国)が寝転がってマッサージを受けていたり、2016年リオデジャネイロ五輪の覇者である諶龍(チェン・ロン=中国)が縄跳びでクールダウンをしていたり、取材エリアでまだ試合前の園田啓悟(トナミ運輸)が身体を動かしていたり......。誰もが所狭しとしており、スタンドも空いている観客席に選手、関係者、報道陣が入り混じっているような状況だった。

 ここで本題に戻って「モモータ」である。コートだけが照らされて足下もあまり見えないほど暗い会場で、話している人たちが一体どの国の誰かまでは見分けがつかないのだが、観客席で試合を見ていると、必ず誰かが「モモータ」の話をしていた。同じ左利きである桃田と林丹のバックハンドショットの打ち方について延々と話している、競技関係者らしい人たちの姿も見られた。桃田の試合が行なわれていない時でも、話題に出てくるのは「モモータ」だった。

 誰が相手でも、必ず勝つ。絶対王者となった桃田の強さに、国籍を問わず誰もが関心を持っている。連覇達成後、コート上インタビューでは、ホームで迎える来年の大一番について聞かれた桃田は「東京五輪に照準を合わせるのではなく、一試合一試合、応援してくれるファン、サポートしてくれる人のために全力で戦う」と答えた。

 違法カジノ店での賭博が判明し、出場停止処分を受けて優勝候補の一角として臨むはずだったリオデジャネイロ五輪を棒に振った経験を持つ桃田にとって、プレーする姿に関心を持ってくれる人たちの存在は、癒しであり、活力なのだろう。夢の舞台まで勝ち続けることで、期待感と期待に応えようとする力は、ともに増していくに違いない。

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