「ガガちゃん」こと臥牙丸にとって、日本は「夢の国」だった

  • 武田葉月●取材・構成 text&photo by Takeda Hazuki

向正面から世界が見える~
大相撲・外国人力士物語
第2回:臥牙丸(前編)

 身長186㎝、体重200㎏超。パワーあふれる取り口で、ファンから「ガガちゃん」の愛称で親しまれる臥牙丸は2005年、グルジア(現・ジョージア)から来日し、角界入りした。明るく人懐っこい性格で、力士仲間たちからも愛されている臥牙丸。現在、十両で相撲を取る彼が、これまでの相撲人生を振り返る――。

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 十両2枚目で迎えた今年の名古屋場所(7月場所)は、「悪い夢を見ているんじゃないか」と思うくらいの場所だったよ。

 3日目の豊山との相撲で、流れの中で右ヒザを骨折してしまったから......。場所前は部屋での稽古、ジムでのトレーニングと順調に仕上がってきていたし、再入幕も狙っていたから、本当にショックで......。

 立っているのもいっぱい、いっぱい。患部にテーピングをきつく巻くと、スムーズに動けなくなってしまうから、それもできない。翌4日目からは、土俵に上がるのが精一杯という状態になってしまった。

 だけど、僕は休まなかった。2日目に東龍に勝って1勝を挙げてから連敗が続いたけれど、西2枚目の地位で1勝だけで終わってしまうと、秋場所(9月場所)では十両から落ちてしまうからね。

 土俵に上がり続けていれば、調子は最悪でも、勝つことがあるかもしれない。お相撲さんになって14年、関取になって10年が経つけれど、その中でつかんだ土俵勘みたいなものはある。それに、僕はこれまで一度も休場の経験がない。丈夫な体に産んでくれた両親に感謝しなくちゃいけないよね(笑)。

 ようやく2勝目を挙げたのは、9日目の大翔丸戦。翌10日目には負け越しが決まってしまったけれど、あきらめなかったよ。14日目、翔猿に勝って3勝目を挙げた時は、ホッとしたね。来場所も関取でいられることが、ほぼ決定したから。

「関取」の地位は、給料がもらえて、付け人が付く、特別な地位。それだけに、僕にもプライドがある。

 実は昨年の秋場所、十両12枚目で6勝9敗と負け越して、翌九州場所(11月場所)でずっと守ってきた関取の座から陥落したんだ。僕の中では「幕下に落ちたら、引退する」と決めていたし、気力もほとんど残っていなかった。

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