クライマー野口啓代の目に涙。五輪内定でライバルも認めた「すごみ」 (3ページ目)

  • 津金壱郎●取材・文 text by Tsugane Ichiro
  • 佐野美樹●撮影 photo by Sano Miki

 ほかの選手たちも、東京五輪をあきらめたわけではない。コンバインド決勝の最終種目のリードで完登しながらも、タイム差でリード2位となった森は、スピード8位×ボルダリング5位×リード2位となった結果に、「世界選手権が始まる前よりも、オリンピックに出たい気持ちが強まった」と意欲を燃やしている。

「リードで完登できたのはうれしいですけど、日本代表のなかで2番手までに入りたかったので、悔しい気持ちでいっぱいです。今回は得意なリードでいい成績をとってコンバインドに活かす作戦だったんですけど、それだと通用しないとわかったので、今後はボルダーとスピードにも力を入れて総合的な強さを上げていけたらと思います」

 伊藤ふたばは今大会7位ながらも、「最後まで笑顔で楽しんでやることができた」と、悔しい結果のなかにも収穫を見出している。これまで舞台が大きくなるほど、結果を気にするあまりに空回りするケースが目立ったが、持ち味の伸び伸びとしたクライミングを取り戻すきっかけを手にしたことで、大きな飛躍を遂げる可能性はある。

 次に東京五輪を狙う選手が挑むのは、11月末からフランスで開催される五輪予選。今シーズンのW杯コンバインド・ランクで20位以内の選手が出場でき、現時点の日本代表では森が6位、伊藤が14位につけて出場資格を手にしている。

 さらには、来年のアジア選手権で優勝すれば、最後の1枠への道は切り開かれる。出場への詳細はまだ発表になっていないものの、すべての選手にチャンスは残されていると言っていい。東京五輪をめぐる熾烈な争いは、まだまだ続いていく。

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