2019.08.21

重量挙げの魅力に取りつかれた男。
五輪でメダルに迫った池畑大の大誤算

  • 折山淑美●文 text by Oriyama Toshimi
  • Photo by Hitoshi Mochizuki/AFLO

 スナッチの最初の重量を125kgにした池畑は、2回目の130kgも上げると3回目は目標にしていた135kgではなく132.5kgにし、しっかり成功させた。桜井勝利監督は「彼のコンディションを考えると、行ってもトータル295kgだと思っていた。スナッチは132.5kgで手堅く取って、あとはクリーン&ジャークで勝負、という作戦だった」と言う。

 池畑は勝負をかけたクリーン&ジャークのスタート重量を157.5kgにしたが、Bグループはレベルが低いため、最初の選手は110kgから。池畑が1回目に挑戦する前に、他の9名の選手はすべて終わってしまっていた。

 ウエイトリフティングでは、名前をコールしてから試技を行うまで、他の選手が間にいれば1分以内。1人が連続してやる場合は2分以内、というルールがある。もしも、池畑がAグループに入っていたとすれば、彼が3回挑む重量に挑戦した選手が複数いたために、他の選手の試技の間に自分は休むことができ、時間的にも余裕を持って試技を行なうことが可能だった。だが、Bグループでは1人だけの挑戦のため、名前をコールされてから2分以内の実施を連続しなければいけなくなったのだ。

 そんな状況でも池畑は最初の重量をきれいに挙げると、次の162.5kgも成功。そして3回目には、「絶対に取ってこい」と言われた165kgをキッチリと挙げて競技を終えた。スナッチとクリーン&ジャーク、そしてトータルでは297.5kg。すべてこの階級の日本新記録だった。

「大会前の状態が万全ではなかったけれども、今回はとにかく6回すべてを挙げようと思っていました。6回の試技全部に成功したのは、高校時代に競技を始めてから10年間で初めてです。クリーン&ジャークの3回連続はつらかったですね。Aグループに入っていればもう少しラクにできたかもしれないけど、本当に疲れました。階段を降りるときに立ち眩みが残っているくらいでした」

 こう言って笑みを浮かべた池畑は、6回すべて成功して自己新。「これでメダルを獲れなかったら、それは仕方ないこと」とも言った。桜井監督は「Bグループでこの記録を出せたのだから、Aグループの選手に強烈なプレッシャーを与えられる」と期待した。