2年間休んでいた世界記録保持者。鈴木雄介が強くなって帰ってきた (2ページ目)

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi
  • photo by Kyodo News

「日本選手権の50kmに出る前は、東京で狙うのは20kmと思っていたし、やりたい気持ちはある。でも、今はどっちでもいいかなという考えになっていますね。東京五輪でいかにメダルを獲るかと考えたときに、50kmでもいいかなという感じです。

 ただ、冬の50kmと夏の50kmはまったく別物なので、まずは暑さの中で戦えるか。さらには海外のライバルたちと、どう戦えるかを試すのが世界選手権だと思います。もしそこでメダルを獲れれば、自信につながる。その自信を持って東京に臨めるのが理想的かなと思います」

 鈴木は今年、日本選手権50kmで優勝して以降も、競歩グランプリ・ラコルーニャ大会(スペイン)の20kmで3位と好調を維持している。

「ラコルーニャは15年世界選手権以来の国際大会でしたが、今までの海外遠征の中では、一番落ち着いてパフォーマンスを発揮できた。これまでの海外の大会で一番よかったのは、14年のワールドカップの4位ですが、あれは中国で時差もなかった。それを考えれば、時差のあるヨーロッパで結果を残せたのは、相当な自信になりました」

 安定の理由は2年間の休養を経て復帰後、自分の予想以上の速いペースで今のレベルまで来られたことだという。

「(3月の)能美大会の前は、故障をして3週間練習を休んだので、調整期間は3~4週間しかなかった。いつもだったら故障した3週間で気持ち的にもダメになってしまうのですが、2年間も休んでいたから3週間くらいは短いなと思えて。そのへんの気持ちの余裕が結果に表われていると思うし、今は2週間あれば仕上げられるという自信も持てています」

 経験値から言えば、50kmは「チームメイトの荒井の方が上」と言う鈴木だが、スパート力では20kmのスピードを生かせる鈴木のほうが高いだろう。また、暑さを経験しておくという意味で、7月末から都内で合宿を組んで東京五輪とほぼ同じ日陰のないコースを30km歩き、そこでもしっかりと自信をつけることができた。

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