「追いつ追われつ」の山口茜と奥原希望。ふたりの対戦は絶妙で面白い (2ページ目)

  • 平野貴也●取材・文 text by Hirano Takaya
  • photo by kyodo news

 奥原が長いラリーに持ち込んでから揺さぶろうとしたのに対し、山口はラリーに付き合いながらも、途中で相手より先にスピードを上げて攻撃を仕掛け、主導権を奪った。日本代表で一緒に練習をしており、互いに特長をよく知る2人だけに、駆け引きは絶妙。

 奥原は「茜ちゃんのストロークの質が高く、スピードの変化も私より(先の)タイミングが多かった。その駆け引きにやられてしまった部分は多くある」と、先手を奪われ、ペースを握られたことを認めた。

 奥原は、第1ゲームでシャトルコントロールに苦しみ、打ったシャトルがアウトになる場面が多かった。山口は、ラリーで優位に立ってもすぐには強打を狙わず、相手を崩していった。第2ゲームになると奥原が積極的にネット前へシャトルを沈め、相手に下から拾わせようとしたが、山口は素早く返して相手の時間を奪い、主導権を渡さずに2-0のストレートで試合を勝ち切った。表彰台では、4年前と立ち位置が入れ替わったが、同じように日の丸を2人で持ち、記念撮影に応じた。

 4年前の対戦時は、奥原が社会人3年目、山口が高校3年生。奥原は決勝前日に「(山口は)スーパー高校生だし、若い選手が注目されるのは良いこと。テレビでそう言われているのを見て、自分も元祖スーパー高校生として、そう言われていたときがあったなと思った」と話していた。

 2人は、ともに幼少期から才能を発揮。「追いつ追われつ」の関係で成長してきた。今大会、山口が優勝後のコートインタビューで「6年ぶりと聞くと若くないみたいですけど、まだ22歳なんですけど、この日本の地で優勝できてうれしいです」と話して、観衆の笑いを誘ったが、2人は高校時代から世界のトップに食い込む活躍を見せていたのだ。

 シニアの世界で先に頭角を現したのは、山口より3学年上の奥原。高校2年で全日本総合選手権を初優勝。翌年には、世界ジュニア選手権の決勝で山口を破って優勝した。2013年に左ヒザ、14年に右ヒザを負傷して長く戦列を離れたが、その間に山口が追ってきた。

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