2019.07.31

後藤晴菜アナの入社試験の記憶
「生半可じゃない陸上愛を伝えました」

  • sportiva●文 text by sportiva
  • 佐野隆●写真 photo by Sano Takashi

―― 取材したい大会はあったんでしょうか。

後藤 迷いなく、オリンピックですね。オリンピック期間中は世界中のトップアスリートが集まって、スポーツが世界をひとつにする期間だと思うんです。いつかその取材をしたいという気持ちはずっとありましたね。出場する選手自身や、その選手のオリンピックに至るまでの過程、また、その選手のモチベーションを支える要素はなんなのか。そういうものを地道に追いかけ続けることができたらいいなと思っていました。

―― 取材したい選手はいましたか。

後藤 いちばんは市川華菜選手と今井沙緒里選手に、今度は取材者として向き合いたいというのが目標でした。友だちとしてはもうずっと長い時間一緒に過ごしていますが、取材者となったときに、彼女たちが私にどういうふうに心を開いてくれるのかなと。少し恥ずかしいような気持ちもありましたが、すごく楽しみにしていた部分でした。リオオリンピックの中継でご一緒させていただいた短距離の朝原宣治さんも、私が現役だった頃から憧れていた方です。北京オリンピックの男子4×100mリレー決勝の映像はいつでも頭の中で再生できるぐらい記憶に残っているので、隣でお話を伺えるなんて夢のような時間でした。

―― 後藤さんが知らなかった世界で、取材して面白いと思った競技はなんでしょう。

後藤 スピードスケートですね。平昌オリンピックの派遣を告げられた時に「後藤にはスピードスケートのパシュート(団体追い抜き)決勝のインタビューをしてもらう」と言われていたんです。正直、知識がほとんどなく、この競技のいちばんの魅力はいったい何だろう?というところからスタートしました。平昌オリンピックで女子のパシュートが金メダルを取ったとき、インタビューを控えた私はオーバル(楕円)のリンクの中でレースを見ていたんですが、もう始まる前から感極まってしまって、涙が止まらなくて。

―― 始まる前からですか。

後藤 そうなんです。オリンピックに派遣されることが決まってから、選手選考の間もずっと取材させてもらっていたので、これからいよいよ決勝が始まるんだなと思ったら気持ちがぐっと入り込んでしまい、溢れる涙で視界がぼやけてしまい、必死でした(笑)。スピードスケートは陸上と似ているところもありますよね。コンマ何秒のタイムの世界で競っていて。レースの時はタイツを着てカッコいい選手たちでも、オーバルの外では私たちと変わらないひとりの女性、取材しているとそういう二面性にも気づきます。