コロンビア国民の悲願達成。22歳ベルナルがツール・ド・フランス制覇

  • 山口和幸●取材・文 text by Yamaguchi Kazuyuki
  • photo by A.S.O.

 第106回ツール・ド・フランスは、22歳のエガン・ベルナル(チーム・イネオス)がコロンビア人選手として初めて総合優勝を達成した。前年の覇者でチームメイトのゲラント・トーマス(イギリス)は、第19ステージでベルナルがマイヨ・ジョーヌを着用するとアシスト役に徹し、チームとして5年連続で総合優勝者を輩出したことを喜んだ。

2度目のツール・ド・フランスで総合優勝を果たしたエガン・ベルナル2度目のツール・ド・フランスで総合優勝を果たしたエガン・ベルナル「(将来は)誰もがベルナルの名前を口にする」

 ベルナルはそれほど、注目の若手選手だった。

 マウンテンバイクのジュニア世界選手権で2位になったベルナルは、19歳の時にイタリアの弱小チームでロードに転向する。そこで2年間走ったのち、山岳での非凡な才能を見込まれて、2018年にイギリスのチーム・スカイ(現チーム・イネオス)に引き抜かれた。

 初出場の2018年ツール・ド・フランスでは、アシスト役としてチームに貢献。トーマスの総合優勝、クリストファー・フルーム(イギリス)の総合3位を陰から支えた。今大会は2年連続での出場となる。

 父親は自転車選手としてプロを目指していたが、たやすい世界ではないことを悟り、夢をあきらめた。息子が自転車に乗ることを勧めてはくれたが、プロになることには大反対。そんなベルナルを応援してくれたのは、母親だった。だが、2017年に若手選手の登竜門と言われるツール・ド・ラブニールで総合優勝すると、父もようやくプロの道に進むことを許してくれた。

 2019シーズン当初、チームはベルナルをジロ・デ・イタリアでエースに起用し、ツール・ド・フランスでは疲労の残るベルナルを欠場させて、トーマスとフルームの両エースで乗り込む予定だった。

 ところが、多くの問題が連続してチームに襲いかかる。

 まずは、チームのメインスポンサーであるテレビ局『スカイ』が撤退を発表。その結果、イギリスの億万長者がチームを救済することになり、チーム名は『イネオス』と変更された。

 さらにはジロ・デ・イタリア直前、ベルナルが鎖骨を骨折してしまう。エースとして起用されるはずだったが、出場を断念せざるを得なくなった。

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