元大関・琴欧洲が相撲人気に「怖い...」。何が支えているのかわからない (3ページ目)

  • 武田葉月●取材・構成 text by Takeda Hazuki

 翌2014年初場所(1月場所)は関脇で8勝7敗。大関復帰は逃したけれど、「次の場所、またがんばろう」と、私は3月の春場所に臨みました。

 こうして始まった春場所、初日こそ勝ったものの、2日目から8連敗で負け越し。10日目の相手は、白鵬でした。

 お互い、若い頃は「ライバル」として稽古場で汗を流した間柄。白鵬は私をすぐに追い越して、横綱になってしまったけれど、最後に白鵬と相撲を取って引退したい......と私は思っていたのです。

 結果は力及ばず、私の完敗だったのですが、「相撲を取り切った」という思いでいっぱいでしたね。

 今は、相撲ブームで本場所はいつも満員御礼。休むヒマもないくらいの地方巡業も組まれています。

 けれども、私が現役の頃は、相撲協会でいろいろな問題が起こったこともあって、お客様が入らない時期が長かった。残念ながら、私は15日間満員御礼の中で相撲を取ったことは、一度もないんですよ。

 お客様がいっぱい入っていて、みんな「相撲が好き」と言ってくれるんですが、「じゃあ、お相撲さん、誰を知ってるの?」と聞いてみると、「白鵬」。イキのいい若手もどんどん出てきているけど、ブーム的なところもあり、本当の意味で白鵬に続く力士がいないように思います。

 昔だったら、貴乃花! 若乃花! 曙! 武蔵丸! 小錦! と次々に名前が出てきたものだけれど、今の相撲人気は、何が支えているのかわからない。そこが怖い点だと、私は思っています。

 だから、鳴戸部屋の師匠となった今は、自分の弟子をしっかり指導しなければ......と思うんですよ。一人一人に力士としての自覚を持ってもらってね。力士はちょんまげを付けていますから、ちょっと外に出るだけで目立つし、自転車に乗って赤信号を渡ってたなんていうのも、全部見られていますからね。

 新しくできた部屋はスカイツリー、浅草など、観光客がたくさん来る地域にあります。外国人の観光客もこれからますます行き交うようになるでしょうし、下町の活性化のために、私も頑張りたいと思っています。

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