やっちまったな、新国立競技場。五輪後改修せずで、負の遺産化懸念 (2ページ目)

  • 後藤健生●文 text by Goto Takeo
  • photo by Getty Images

 一方、球技専用に改装したとしても採算が取れる見通しは立たない。

 明治神宮外苑には、数年後には秩父宮に代わる新ラグビー場が建設される予定になっているから、「球技」といっても新国立競技場の使用が想定されるのはサッカーということになる。

 しかし、今後、Jリーグではパナソニックスタジアム吹田のようなサッカー専用の手頃な大きさのスタジアムが主流になっていくはずだから、新国立競技場はJリーグクラブの本拠地としては使いづらい。巨大すぎるし、使用料もかさみ、しかも陸上トラックを撤去したとしても試合が見にくいことに変わりないからだ。

 陸上トラックを撤去してそこに観客席を設ければ、たしかに観客席の最前列はピッチに近くなる。だが、メインスタンドやバックスタンドからピッチまでの距離は陸上競技場の時と同じなのだから、試合が見やすくなるはずがない。

 陸上競技場からサッカー場に転用されて成功した例としては、イングランドのマンチェスターにあるエティハド・スタジアムがある。もともと、2002年のコモンウェルスゲームズ(英連邦大会)のメイン会場として建設された陸上競技場だったのだが、同大会終了後に改装されて2003年以降はプレミアリーグ王者マンチェスター・シティのホームスタジアムとなっている。

 このスタジアムの改修が成功したのは、設計段階から後利用計画(サッカー場への転用)が決まっていたからだ。

 たとえば、サイドスタンドはスタンドをサッカー用にあらかじめピッチに近いところから建設しておき、その後スタンドの下部分とピッチを埋めて、その上に陸上トラックを設けたのだ。英連邦大会終了後はトラックを撤去して埋めた分を掘り下げてサッカー場に改装したから、スタンドからはゴール前の迫力あるシーンを間近に見ることができるようになった。ピッチを掘り下げてサッカー場に改修したおかげで、英連邦大会の時(陸上競技場時代)に収容力3万8000人だったスタンドは5万5000人規模に拡大された。

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