トライアスリート秦由加子×上田藍。声援は「名前で呼ばれるとうれしい」 (2ページ目)

  • 星野恭子●取材・文 text by Hoshino Kyoko
  • 五十嵐和博●写真 photo by Igarashi Kazuhiro

――悔しさを力に変えて、すごくポジティブですね。

上田 終わったレースから、いい部分と悪い部分を抽出したら、もう次に向かうしかありません。クヨクヨしている時間はもったいないと思います。

 横浜大会は毎年、本当にたくさんの応援があるので、力をいただいています。応援に応えられるよう、これからも頑張ります。

――応援といえば、これまでで印象的な応援はありますか?

上田 やはり、下の名前で呼ばれるとうれしいですね。また、バイクパートでは、冷静に戦えているときほど、「誰がどこで応援してくれている」とわかるんです。とくに印象に残っているのは、「藍ちゃん、その先に東京オリンピックがあるんだぞ!」です。熱い思いを感じましたね。

 今回の横浜大会では印象的な応援が2つありました。ひとつはバイクパートで、「回せ、回せ」という友人の声。それでペダルをしっかり回すイメージを持てました。もうひとつは、ランのときで、「頑張れ、頑張れ」という応援の中に、「かわいい!」という声が......。キツいときだったのですが、その新鮮な応援のおかげでがんばれました!

――楽しい時ばかりでなく、ケガや調子が上がらないなど厳しい局面もあると思います。そんなときは、どんなことが力になりますか?

 私の場合は、ランパートで義足側の脚の痛みが辛いです。(脚を入れる)ソケットが固いので肌に当たると痛みます。「障害がなければ......」と思うときも、実はあります。でも、そんなとき、ふと義足に目を向けると、たくさんの人の支えを思い出すんですよね。例えば、足裏に貼ってあるブリヂストン製のソールは滑らないようにと特別に開発してもらったんです。こうして皆さんの支えを感じることで、「頑張るぞ!」と力が湧きます。

上田 本当に、一人では乗り越えられません。コーチやトレーナー、チームの仲間たち。そして、家族や友だちなど、私と同じ夢を見てくれる縁の下の力持ち的な人たちの存在が気持ちを奮い立たせてくれるし、「今、がんばらないでどうするんだ」と、粘り強さにつながっています。 

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