初代スピード女王は野中生萌。気温5度でもタンクトップ姿で逆転勝利 (2ページ目)

  • 津金壱郎●取材・文 text by Tsugane Ichiro
  • photo by AFLO

 競技前に寒さで震えていた野口啓代は3位で表彰台に立った。自己ベストの10秒30には及ばなかったものの、悪いコンディションのなか決勝ラウンドで10秒803をマークしたことに手応えを掴んでいた。

「スピードは苦手な種目ですけど、こんなに寒くて条件が悪いなかでも、自己ベストに近いタイムを残せたことは自信になりましたね。ケガもないし、体調もいいので、今シーズンはいい流れできているなと思っています。次のリード・ジャパンカップに向けて、明日からはしっかりとトレーニングを積みたいと思います」(野口)

 日本山岳・スポーツクライミング協会が1月に日本記録の規定を変更し、この大会以降の記録が公認日本記録として扱われることになったため、女子はこの日のファイナルで野中がマークした9秒388が公認日本記録となった。ただ、昨年11月のアジア選手権で8秒57をマークしている野中をはじめ、各選手とも気象条件の悪いなかで自己ベストに近いタイムを残したことを考えれば、記録はさらに上がっていくことだろう。

 一方の男子では、池田雄大がスピード種目のスペシャリストとしての面目躍如。決勝ラウンドではファイナルまで相手に先行されるレースが多かったが、最後まで勝負をあきらめなかったことで初優勝を手繰り寄せた。

 その池田に準決勝で敗れたのが、非公認ながらも6秒69の記録を持つ楢﨑智亜。3位決定戦で15歳の抜井亮瑛(ぬくい・りょうえい)に敗れて4位に終わったが、普段から一緒に遊ぶ仲間の優勝を、「負けて悔しいですが、優勝してくれてうれしい気持ちもあります」と祝福した。

 2位になったのは予選ラウンドを16位で通過した藤井快(こころ)。予選17位と0.056秒差の8秒690でかろうじて決勝ラウンドに進むと、準決勝では公認日本記録になった6秒920をマークした。

「公式戦で初めて6秒台のタイムを残せたのがうれしかったです。でも、今後に向けては6秒台をコンスタントに出せるようにするという課題も見つかったので、そこに取り組んでいきたいですね」(藤井)

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