カーリング界の新女王へ。吉村紗也香が「新生」北海道銀行を変える (3ページ目)

  • 竹田聡一郎●取材・構成 text by Takeda Soichiro
  • 甲斐啓二郎●撮影 photo by Kai Keijiro

――小笠原さんと一緒にプレーしていた際は、吉村選手はカーリング人生で初めてスキップ以外のポジションをこなしていました。

「主にセカンド、サードでプレーしていましたが、ポジションごとに仕事があって、その積み重ねでショットがつながっていく――そのことを体験できたのはよかったですし、いい経験でした。一投ごとの重みは、スキップ以外のポジションをやってみて、あらためて学んだ気がします。

 そして、ハウスに立たない4年間はハック(※ストーンを投げるときに使用する足場)側からの景色を見ることができました。その経験から、相手にさせたいこと、させたくないことが、自然にクリアになっていった気がします。

(スキップだった)ジュニア時代は自分の作戦を実践する、自分が投げたいショットを決める、そのことだけに集中していましたが、今は相手のチームと選手の特徴、どこが強くて、どっちのターンが得意で、どのショットは決めてくる、といった相手についての観察や分析も意識するようになったかもしれません」

――新生チームは今季、これまで参加したすべての大会でクオリファイ(決勝トーナメント進出)を決め、ワールドツアーのグランドスラムにも2大会出場しました。好調の要因はどこにあるのでしょうか。

「ポジションが変わり、あらためて基礎から見直して練習してきました。その結果、選手個々のショットの安定性が出てきたのだと思います。

 あとは、選手間のコミュニケーションが細かくなりました。スイープひとつにしても、どっちからどの角度で(氷を)履くかなど、1回のスイープ間の短い10数秒間でも『もっとこうしてほしい』と、みんながアイス内外に関らず、意見を出し合っています。

 カナダの大会など、男子選手が隣のシートで試合をしていると、自分たちの声をかき消されてしまうケースもあるし、世界選手権やオリンピックではスタンドからの歓声で、指示が聞こえないことがあるかもしれない。ジェスチャーなども含めて、いろいろ考えながらやっています」

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