アジア大会で男女がメダル獲得。日本フェンシング界の伸びしろに期待 (3ページ目)

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi
  • 奥井隆史●写真 photo by Okui Takashi

 エペ自体も、フェンシングのために地元の愛知から山口の岩国工業高校に進学した1年の夏に、軽い気持ちで出た17歳以下の全国大会で優勝し、そこから本格的に始めたもので、競技経験もまだ5年足らずだ。世界の上位ランカーを見れば30代の選手が多く経験も重要になるエペで、世界ランキング10位の力をしっかり出せた結果は、その伸びしろの可能性をしっかり見せるものでもあった。

 一方、同日行なわれた女子サーブルも、日本人ふたりが準々決勝進出を果たし、アジア大会の女子サーブルで初の個人メダルとなる銅までたどり着いたのが、世界ランキング33位の田村紀佳(旭興行)だった。素晴らしい結果ながらも本人は、「初メダルは金がよかった。本当に悔しすぎて」と振り返る。

 準決勝の対戦相手は、7月の世界選手権では7位の邵雅キ(中国)だった。対戦成績は、これまで3勝1敗で6月のアジア選手権では15-12で勝っている相手だ。

 試合は、第1ラウンドから5連続得点もあって8-5とリード。第2ラウンドもこの調子は衰えず、2分10秒を残す段階で14-8とリードして、銀メダル以上確定に王手をかけていた。だが、ここから大きく崩れてしまう。

「14点目を取った時に、多分ふっと気持ちが緩んだというか、あと1点だという気持ちでちょっと抜けちゃったみたいな。そのあとのポイントを(自分の)悪い癖で取られたので、『ちょっとやばいかな』と思ったら、もう頭の中が真っ白になってしまいました」

 こう話すように、そこから7点を連取されて逆転負けと惜しすぎる結果になった。

「自分はいつも気持ちで負けているとわかっている。また同じことで負けて、本当に悔しかったです」と話す田村だが、金メダルも見える位置での大逆転負けは、これまでの悔しさとは違うはずだ。

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