世界王者になった桃田賢斗。圧倒的だった強さの要因は「心の成長」 (3ページ目)

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi
  • photo by AP/AFLO

「大舞台になればなるほど相手も勝ちたいという気持ちが強くなってくるし、緊張する。そういう時こそ熱くなり過ぎず、冷静にプレーした方が相手は嫌がると思った。スタミナ勝負になれば勝てるという自信はあったから、冷静に視野を広くもってプレーして、相手のウイニングショットを確実に取ろうとコートに入りました」

 決勝の第1ゲームは、出だしの長いラリーを桃田が制する。その後、鋭いスマッシュを決められて接戦が続いたが、桃田の表情は落ち着いていた。後半になると相手が決めにきたスマッシュを連続で拾い、13-11からは焦れてきた石宇奇のミスを誘発する展開に持ち込んで8連続得点。21-11で第1ゲームを先取した。

 第2ゲームは「相手はもうあとがない状況で、最初からスピードを上げてきているのがわかったので、自分もついていこうとスピードを上げました。その中で相手の疲れも見えたので、長いラリーをするだけではなく、時々攻撃した方が相手はどんなショットでくるかわからなくなるだろうと思って、少しギアを上げて攻めようと思った」と言うように、スマッシュを効果的に入れながら得点を重ね、11-7で折り返した。

 そして、後半も桃田が自らのペースに持ち込むと、石を応援する地元中国の観客の大歓声はすっかり消えて静まり返ってしまい、最後はネットインで21点目を奪ってあっさりと優勝を決めた。

「腹筋を痛めたこともあって、大会前に自分で決めた『守り』という言葉どおりに相手のウイニングショットを拾い、長いラリーでプレッシャーを与えられて、いつもと違う戦い方で優勝できたのはすごく自信になりました。スタミナに関しては、試合をしていても相手選手の疲れがすごくわかるようになったし、自分はまだまだ動けるという気持ちもあったので、そこは成長できたところかなと思います」

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