世界王者になった桃田賢斗。圧倒的だった強さの要因は「心の成長」

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi
  • photo by AP/AFLO

 7月30日から中国・南京で行なわれた世界バドミントン選手権で、男子シングルスの桃田賢斗(NTT東日本)が日本人男子として初優勝。冷静な試合運びで栄冠を獲得した。

日本人男子初となる世界選手権優勝を果たした桃田賢斗日本人男子初となる世界選手権優勝を果たした桃田賢斗 世界ランキング8位で第6シードになった桃田は、運に恵まれた部分もあった。準決勝までに対戦するはずだった第4シードの孫完虎(韓国)と第2シードのリー・チョンウェン(マレーシア)が棄権。さらに、世界ランキング1位で大会連覇を狙うビクター・アクセルセン(デンマーク)は、3回戦でリオデジャネイロ五輪優勝の諶龍(中国)に敗れ、その諶龍は準決勝で第3シードの石宇奇(中国)に敗戦した。

「正直、世界ランキング上位の選手とは決勝でしか対戦していないので、世界チャンピオンになったという実感はあまり湧いていないです。でも、シード選手が棄権したチャンスをものにできたというのは、すごく自信になっているし、次に彼らと対戦したら勝てるように準備をしていきたいです」(桃田)

 それでも、彼は今回の戦いで、幸運だったことが霞んでしまうほど、圧倒的な強さを見せつけた。

 3年ぶりの大舞台。違法賭博問題で出場停止になった期間も含めて、支えてきてくれた人たちに恩返しをする大きなチャンスと思い臨んだ大会だった。ひとつ誤算があったとすれば、大会初日の練習で腹筋を痛めてしまい、フルパワーでスマッシュを打てない状態だったことだ。

 それでも、桃田にとってそれはマイナスにはならず、彼が選んだのは、"守り"を重視する戦法だった。

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