選手だけじゃない「敵」も出現。
王者フルームがツール5勝目へ快走中

  • 山口和幸●取材・文 text by Yamaguchi Kazuyuki
  • photo by ASO

「間違いなく、僕のキャリアのなかでもっとも困難な挑戦になる。未知の領域に突入することになるが、この美しいレースを愛しているので、最後まで全力を尽くしたい」とフルーム。すでに5月のジロ・デ・イタリアを逆転で優勝し、1ヵ月の調整を経て臨んできた。

 ところが、大会直前は混乱を極めた。ツール・ド・フランス主催者が「フルームの出場を認めない」という通知をチームに郵送したことが報じられたからだ。2017年9月、ブエルタ・ア・エスパーニャ期間中のアンチドーピングコントロールで、ぜんそく薬のサルブタモールが許容量を超えて検出されたことを理由に、「大会の権威を守るため」という国際規定を掲げてフルームの締め出しを図った。

 ぜんそく薬のサルブタモールそのものは禁止薬物ではなく、フルームも持病のぜんそく治療のために服用することは事前に申請していた。問題なのは基準値を超えた服用量で、主催者はその点を指摘したのだ。

 昨年9月に基準値超えが発覚すると、国際自転車競技連合はアンチドーピング規則に準じて、ただちに懲戒手続きを発動。フルームに正当な理由と、その証明の提出を求めた。

 アンチドーピング法廷にそれらの証拠は集められ、WADA(世界アンチドーピング機構)による審議と専門家の意見が求められた。そして、ツール・ド・フランス開幕5日前になって、「フルームの服用はルール上、問題ない範囲での行為である」という結論になった。

 その結果、主催者はフルームを排除できる理由がなくなり、フルームは晴れてスタートラインに並ぶことができた。ただし、大会5勝目の道は決して容易ではないことを、フルームは再確認したことだろう。

 23日間で行なわれる大会は開幕から9日間を終えて、最初の休息日をアルプス直下のアヌシーで過ごした。総合1位のマイヨ・ジョーヌを着るのは、BMCレーシングのグレッグ・ヴァン・アーヴェルマート(ベルギー)だ。

2 / 3

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る