五輪種目のクライミング複合。ポイント数が3種目の「掛け算」なわけ (3ページ目)

  • 津金壱郎●取材・文 text by Tsugane Ichiro
  • photo by AFLO

 スピードの予選はタイムアタック形式だが、決勝では対戦形式で実施される。1回戦は6選手が2人一組で競争し、勝者は次のラウンドに進出。3人の敗者のなかで最速タイム1名を含めた4名で争う準決勝を経て、決勝・3位決定戦が行なわれる。このため、スピードで1位を取るには、3レースで勝たなければならない。野中は実践のなかで掴んだ課題を明かす。

「疲れが出ちゃいましたね。2レース目はセーブして登ったけど、それでもレースごとのインターバルが短いこともあって、腕が回復しきらなかったです。ボルダリングやリードでは、腕がこれほどパンプすることは少ないんですけどね。

 コンバインドは1日で3種目をやるんで、腕を含めた体力面を強化していかないとなって思いました。走ったりする体力ではなくて、練習でも1日のなかで、たとえば午前中はスピードをやって、午後はリードとボルダリングもやるようにする必要があるなって感じています」

 初めて行なわれたコンバインド大会を経験することで、野中のようにフィジカル面の課題を感じたと答える選手は他にも数多くいた。楢﨑智亜が「背中と大腿部の筋肉痛になりました。ボルダリングでは(筋肉痛に)ならないので、それだけ負荷がかかっていることなので、ここから鍛えていきたい」と言えば、伊藤ふたばは「疲労感や種目間の時間の取り方が勉強になった」と語っている。

 予選の初日、決勝の2日目と、盛岡は晴天に恵まれて気温は30度近くまで上がった。屋外に設置されたスピードとリードのクライミングウォールでの競技は、2020年7月24日の開会式から8月9日までの17日間で行なわれる東京五輪を見据えると、いい経験になったのではないだろうか。

 そして、第1回大会を行なったことで、選手だけでなく主催者側にも今後の改善点が浮き彫りとなった。なかでも、リード・スピード会場から400mほど離れたボルダリング会場となった体育館には改善の余地が大いにあるだろう。

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