五輪種目のクライミング複合。ポイント数が3種目の「掛け算」なわけ (2ページ目)

  • 津金壱郎●取材・文 text by Tsugane Ichiro
  • photo by AFLO

 男子予選では、楢﨑智亜はリードでロープをクリップにかけ忘れるミスをして21位に沈んだが、スピード1位、ボルダリング2位が効いて複合ポイント42点で予選をトップ通過。予選3位の高田知尭(たかた・ともあき)もスピードは24位と大きく出遅れたものの、リード3位、ボルダリング1位で挽回して複合ポイントを72点にとどめた。

 これに対して、藤井快(ふじい・こころ)はスピード6位、ボルダリング7位、リード8位で、総合ポイント336点の8位。ボルダリング・ジャパンカップ3連覇中の得意種目で順位を上げきれなかったことが響いたとはいえ、3種目に安定したパフォーマンスを見せながらも決勝進出を逃すことになった。

 男子決勝戦は智亜、明智(めいち)の楢﨑兄弟が熾烈な優勝争いを演じた。最初に魅せたのは兄・智亜だ。スピードで自身が持つ日本記録を0秒60更新する6秒87をマーク。危なげなくトップに立つと、2種目目のボルダリングでも3課題目まで完登を重ね、この種目の1位も"鉄板"かと思われたが、4課題目で完登とゾーン獲得を逃して4位となる。

 一方、スピードを3位で滑り出した弟・明智は、2種目目のボルダリングでただひとり全課題を完登して1位。この時点で複合ポイント4点の智亜を抜いてトップに立ち、最終種目のリードに臨んだ。

 予選のリードはただひとり完登していた楢﨑明智だったが、決勝では先にアテンプト(トライ)した智亜が獲得した高度に2手届かず2位。この種目で1位になった兄・智亜が複合ポイントでも再逆転し、「達成感、ハンパないですね。明智とこんな接戦になるとは。楽しかったけど、プレッシャーがすごかった」と笑顔を弾けさせた。

 女子は出場選手の複合でのレベル差が大きく、野口啓代が1位、地元優勝の期待がかかった伊藤ふたばが2位。野中生萌(のなか・みほう)が4位となった。国内女子では唯一9秒台の自己ベストを持つ野中は、得意のスピードで1位を取れなかったことが響いたが、「残念ですけど、収穫もありました」と口にする。

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