なぜ小平奈緒は平昌であんなに強かったのか。苦労を知る番記者が明かす (2ページ目)

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi
  • photo by JMPA

 もちろん技術でも新たな発見があった。

「脚の長い人は、その長さを生かして滑るのは何となく想像できていたけど、身長が同じくらいのイレイン・ブスト(ソチ五輪3000m、チームパシュート優勝。1000m、1500m、5000m2位)と一緒に練習ができたのはすごく大きかった。効率よくスピードを保持するような体の使い方で、重心移動というか、いいタイミングで氷を押したり体を支えたりしているのを彼女の後ろを滑りながら見られて、ストレートの滑りがすごくよくなった」

 日本で男子選手を参考にしてもパワーの違いがある。ビデオなどの映像で見るのとは違う肌で感じる感覚だった。

 さらに子供たちへの指導を見ていると、スケート王国らしく、軸になる基本が統一されていることに気がついた。その基本があるからこそ、スケートに必要な筋力や、滑りのタイミングがしっかりと計れて、速さにつながっていた。

 日本の場合は、統一されたスピードスケートの基本というのはなく、小中学生で強い子は体格がよかったり、体力がある子という印象だった。シニアへ上がると、ケガで低迷する傾向があり、なかなか活躍にはつながっていない。

 結果を出していた男子短距離はともかく、中・長距離でなかなか伸びてこないのは技術だけでなく、コンディショニングや指導法にも問題があるのではないかと小平は感じた。オランダで知ったこの差は、自分の滑りだけではなく、日本のスピードスケート界の今後を考えるきっかけにもなった。

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