「空飛ぶ才女」は世界選手権も技の勉強。
ハンググライダー・鈴木皓子

  • たかはしじゅんいち●文・撮影 text & photo by Takahashi Junichi

 それでも少しずつ腕を磨いて上達し、やがて競技に出場して"鈴木選手"となる。自身がイメージする通りのフライトに近づけたと感じたのは、2007年3月に出場した日本選手権(茨城県)の最終日だった。

「最終日は80kmぐらいの四角形をぐるっと回るタスク(課題)でした。この時、山を離れて、かなり遠くまで回ってゴールすることができて、ようやく自分の飛びたかったイメージに近いフライトができたと思ったんです。それからは、ますます飛ぶことに熱中して、週末は必ず空にいるようになりました」

 鈴木によれば、ハンググライダーの魅力のひとつは自然を相手に飛ぶ戦略的な面白さだ。
                                    
「ハンググライダーには動力がついていないので、上昇気流で高度を稼ぎ、その高度を距離に換えて進みます。上昇気流のあるところは気象条件によって違うので、その日の気象予報と、実際に現地で雲などを観察することによって、どうやって飛ぼうかを考えるんです。

 あそこの雲の下で上げて、山の尾根上を飛んで、次の採石場でまた上げて......といったふうに、変化をつけるポイントや飛びやすい地形を考えて、飛ぶ前にある程度作戦を立てます。ただ、実際は予想と違うことが多いので、飛びながら作戦を修正していかなければなりません。ごくまれに、予想がピッタリはまることがあって、その時は最高に気持ちがいいです」

 そして、もうひとつ。上空で体験する非日常的な自然や風景も、やはりハンググライダーの大きな魅力なのだという。

「とびきり美しい景色に出会ったり、珍しいものを見たときは、飛んでいてよかったなと思いながら空中でしばらくボーッと眺めたりします。

 巨大な雲の壁に沿って上昇気流で上がるとき。空中にいる自分の下にもくもくと雲が沸いたとき。海辺の山で魚をつかんだミサゴに出会ったとき。オーストラリアで大きな鳥に襲われたとき。眼下の岩山を鹿が走っていくのを見たとき......。どれも自然の中にいる自分を感じます」

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