世界が驚くカーリング女子。チームを作った本橋麻里「8年前の想い」 (5ページ目)

  • 竹田聡一郎●取材・文 text by Takeda Soichiro
  • 甲斐啓二郎●撮影 photo by Kai Keijiro

――本橋さんは自ら「成長したい」という大きな動機で新チームを結成しました。ただ、厳しい言い方になるかもしれませんが、所属先のNTTラーニングシステムズからお給料をもらって、ファンやメディアを含めて周囲の期待も大きい。自身が「成長する」「楽しい」だけでは、納得しない人もいるのではないでしょうか?

「そうですね。プロではないですが、そんなに恵まれた環境で、カーリングを自分の好きなようにさせていただいているので、より一層シビアにならないといけない。(所属先の)社長は、冗談まじりに『オリンピック、絶対、行けよ!』とか言いつつ、『自分が納得いくようにやれ!』とも言ってくれます。そういう温かい言葉をいただくと『この会社にお世話になれてよかった』という感謝の気持ちと、『やっぱり成績は出したいな』という願望が強くなります」

――では、そのチームとしての目標を聞かせてください。新チーム結成発表会見では、多くの記者が「ソチ五輪」という単語を本橋さんの言葉で引き出そう必死でしたが、最後まで口にしませんでした。

「今は、『オリンピック』という言葉が自分の中では現実的なものではないんです。求められている自覚はありますが、(五輪に対して)"肩肘張って"という状況でもありません。それよりも、目の前の1シーズンを集中してやりきる。その中に(チームの)伸びしろが含まれているんじゃないかと思っています。そして、その延長戦上に五輪は存在するので、今はそういうスタンスでいいのかな、と思っています。

 というのは、まだ私たちはアイスの上で何もしていない状態です。不安もあるし、自信だってまだない。そこで大きな目標を言うと、嘘になる。このメンバーで日本代表として戦えたらいいなぁとは思っていますが、嘘はつきたくないから『ソチを目指します』とはやっぱり言えませんでした。まずは(常呂)町内のリーグ戦です。

 ただ、常呂のリーグって、男子も一緒なんですよ。その人たちに『オヤジをなめたらいけないよ』って、何度も言われています(笑)。あの人たち、感覚で投げてきて、それがまたうまいんですよ。その厳しいリーグで目標を作りながら、今シーズンを戦い抜くこと。これが最初の目標かもしれません」

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