渡部暁斗「金メダルを獲ってもレースがつまらなかったら意味がない」 (3ページ目)

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi
  • 五十嵐和博(人物)、赤木真二(競技)●写真

この日、渡部暁斗のシャツは彼らしいスキー柄だったこの日、渡部暁斗のシャツは彼らしいスキー柄だった 執着心がないことで、競技の結果以外でも柔軟に対応できている面もあるという。

「試合もすべてがほぼヨーロッパスタンダードで行なわれているので、僕はもう郷に入っては郷に従えでいいと思っています。懐に入り込んでしまえば同じ人間だから優しくしてもらえる。自分が正々堂々とぶつかって結果を出していれば認めてもらえるし、そうすると結果以外のところも見てもらえるので居心地がいい。

 その代わり、よくない時の切られ方もすごいけど、それだけしっかり見てもらえているということでもあるので、そういう方が評価される立場としてはおもしろさを感じます」

 1990年代、他の選手たちに圧倒的な差をつけてW杯総合を3連覇した荻原健司は、次の会場に行っても「今週も勝つんだろうな」という気持ちになっておもしろみを感じられなくなっていたという。むしろ勝てなくなってからのほうが、コンバインドを研究する楽しさを感じるようになったと話していた。

 渡部にその話をすると「僕は逆に勝っていることが少ないから、楽しいというのがあるのかもしれませんね」と笑う。

「今はあまり年齢のことは考えていません。自分が楽しめて結果が出ているうちは続けてもいいかなと思っています。いつやめてもいいわけだし、別に終わりを決めているわけではないので。とりあえずW杯で30位以内に入ってポイントを獲るとか、表彰台争いができるうちは、やっていてもいいかなと思う。でも、ワクワクしているうちにやめてもいいし、逆に、勝てなくなってボロボロになるまで続けてもいいとも思っているんです。

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