金メダル候補・渡部暁斗が強い理由が
一読でわかる「深いインタビュー」

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi
  • 五十嵐和博(人物)、赤木真二(競技)●写真

 その日の体調によっても違うので、やる順番も変えてみるとか、理解するには時間もかかりますが、毎日毎日いろんなパターンを試しながら『いい』『悪い』とやっていれば、最終的にはすごく高いところへいけると思う」

 そんな取り組みの中で、一昨年の夏にはアスリートに適しているという食事法も試してみた。その時は筋肉が落ちて体が軽くなり、ジャンプは飛べるようになったが走れなくなって失敗だった。

「遠征に行く時は荷物が多いので、あまり食材を持ち込めないし、1回行ったらなかなか日本に帰って来られないので、食に関してはある程度の寛容さを持っていないと対処できない。我慢して健康的な食事を摂るか、我慢しないでちょっと不健康でもいいとするか。ストレスが栄養の吸収にもかかわってくるなかで、『金メダルのため』にとストレスを感じながら食べるのが果たしていいのか......。

 僕たちの場合は現地調達で何とかして、ホテルで出された食事でも試合ができるというスタイルでずっとやってきたので、その点では食事法を一度試してみて、変えなくてもいいことに気づけたから今はすごく気楽ですね。バランスを考えて、よく噛んで腹八分目で食べるということを押さえておけば、どこへ行っても大丈夫」

 渡部はスポーツ選手として、「これを食べれば強くなるとか、これをやれば強くなるという簡単な方に行きがちになるのは間違い。情報だけに左右されると、自分にとって何が一番適しているかという本質を追究することがおろそかになってしまう」と話す。

 また、トレーニング方法も「効率ばかりを意識してしまうと、ガムシャラに自分を追い込むことが無駄だと思えてしまうが、そういうトレーニングも必要だし、自分に対してのアメとムチの使い方も覚えなければ、トレーニングもうまくいかない」という意見だ。これらは自身のこれまでの経験に基づく信念といっていい。

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