「人類初」の領域へ。スピードスケート
小平奈緒のタイムが凄いことに!

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi
  • photo by Kyodo News

 こう話すように、アウトレーンスタートの小平の滑りは落ち着いていた。3歩目までは当然のように力強い動きだったが、4歩目からは、速く滑ろうと目一杯力を使うほかの選手たちの動きとは違い、スケートを滑らせる柔らかな動きになった。そして100mを10秒33で通過すると、その後は乱れることなく加速をして小さな第2カーブもスムーズに抜け、ゴール前ではそれまで以上にテンポを上げる滑りに変えて、そのままゴールをした。

「今日は同走が郷さんということもあり、ちょっと日本人の雰囲気というのを体で感じながら、かなり落ち着いていたかなと。ただ、動きにキレが足りなかったのは、またしっかりと体を休めれば戻ってくるんじゃないかなと思います。レースを終えて力が余っているというのはないですけど、1月にしっかりと日本でチームメイトと練習ができたので、それが今の自分の体に染みついている」と余裕を残した滑りを振り返る。

 小平はこのあと12日の1500mに出場し、その後は14日の1000m、16日には500mに出場する。

「1500mは全力でいくというより、500mに向けて上げていければいいかな。1500mはレース経験が少ないので、よくても悪くてもいい経験になるし、いいモチベーションにつながると思う」

 今季、世界記録保持者にもなった1000mへの意識はどうかと聞かれると「そこへ向けてピークを作るというよりも、帯でピークを持っていきたい」と答えた。その言葉からは1000mも勝つ気満々なのが伝わってくる。

 この日、自身が出した「37秒05がすごい記録とは思わなかった」という理由も「練習で出ているラップタイムを計算すれば、妥当というか自分の実力以上のものが出ているタイムではない。それは裏を返せば、今の疲れの中で実力通りの滑りができているのかなと思います」と説明する。

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