50歳のトレイルランナーが難関レースへ。松田丈志がその真意を問う (2ページ目)

  • 松田丈志●文 text by Matsuda Takeshi

 私は32歳で、競泳の第一線から退いた。なぜ引退したか。それは自分の能力が落ちてきたと感じたからだ。もっというと、自分の"努力感"(目標達成に要する全体の労力)と世界の舞台での実際の結果とのギャップが生まれてきていると感じた。結果を出すためにやるべきことはドンドン増えていくのに、実際の結果、つまりタイムや順位は下がりはじめている。そんな感じだった。

 世界は常に進化していく。若手も次々と出てくる。それと同じか、それ以上のスピードで自分も成長していかなければ、世界では戦えない。少しでも落ちはじめたら、放っておけば、そのギャップは大きくなっていくばかりで、再び追いつくには自分の中で何か大きな改革をしなければならない。しかし、改革をしても追いつける保証はなく、やってみなければわからない。

 私は、自分の努力感と実際のパフォーマンスにギャップを感じた時、選手として先はそう長くないんだなと悟り、とにかく目の前の五輪まではやり遂げようと思った。それがリオ五輪だった。

 そういう意味では、鏑木選手の50歳はもうとっくに身体的ピークは超えているはずだ。

 どうやって自分の身体を保ち、向上させ、50歳の体で勝負していくのだろう。あるいは、その肉体的ピークとは関係ないところにトレイルランニングのパフォーマンスの決定要因があるのか。

 競泳はスポーツ全体の中で見れば、選手層の若い競技だ。

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