驚きのW杯総合1位。小林潤志郎が「葛西頼み」の男子ジャンプを変えた (3ページ目)

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi
  • photo by Kyodo News

 今大会の個人ラージヒル予選では、W杯総合トップの証(あかし)であるイエロービブを着て、最終ジャンパーになるという初めての経験もした。

「イエロービブはメチャクチャ重いです。僕の前にクラフトがいるんですから」とプレッシャーにさらされた。さらに予選の日は風も強くてクルクル変わる条件で、「今日は自分のいい内容のジャンプができずに苦しかったけど、予選なので3本目は思い切って飛ぶことができました」というように、3本目に131.5mを飛んで5位で本戦へと駒を進めた。

 助走スピードはクラフトらに比べれば、1km/h以上遅い86.8km/h。潤志郎は「翌日の団体戦に向けて修正していかなければいけない」と話したが、横川HCは「今日は風で湿った雪が助走路に入ってきて、特に最後の潤志郎の時は入ってくる量も多くなってブロアーで吹かないといけないくらいヒドイ状態だった。それで1km/hは遅くなっていると思うし、予選ではちゃんといいジャンプができているので調子はいいと思います」とと分析し、こう続けた。

「11月の日本選手権ラージヒルの予選で幻のバッケンレコードを飛んだあたりからは、今の状態も想定の範囲内だったし、あのくらい飛べばW杯でもシングル順位には必ず来るという確信がありました。技術的には助走姿勢が変わっただけだと思います。以前の助走は、重心が少し後ろになっているところから立っていたので飛距離を伸ばせなかったのが、重心をうまく体の真ん中にすることができて、真上に立てるようになった。サマーグランプリ白馬大会あたりから変わり始め、冬のアイストラックになって合ってきた感じです。さらに、トップ選手は必ず持っている、ツキも持っている状態だと思います」

 横川HC の言葉通り、26日の個人ラージヒル本戦で、潤志郎は自信とともに、ツキを持つ一面を見せた。ルカのジャンプ台はランディングバーンの幅も広く、ウインドファクターには現れない巻いた風が出る。潤志郎の直前に飛んだクラフトは、ウインドファクターこそ向かい風0.24mの条件だったが、飛び出した直後に強い横風に当たって126mしか飛べず、1本目26位という結果。カミル・ストッフ(ポーランド)も同じような条件で、126mの27位という結果になった。

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