横綱たちに稽古で可愛がられる新小結、
阿武咲。「しっかり暴れます」

  • text by sportiva
  • photo by Kyodo News

 いくつかの部屋からスカウトが来たが、「自分を成長させてくれる、厳しく指導してくれる部屋がいい」と、元関脇・益荒雄(ますらお)の阿武松(おうのまつ)親方が師匠を務め、猛稽古で知られる阿武松部屋の門を叩いた。ぶつかり稽古を重視する阿武松親方の指導で、さらに突き押しを磨いた阿武咲は、2013年初場所の初土俵から所要12場所で新十両に昇進。一時は、ケガで幕下に陥落する挫折も味わったが、その悔しさを稽古にぶつけ、21歳で新三役の座をつかんだ。

"白いウルフ"と呼ばれた現役時代の師匠は、新小結として迎えた1987年の春場所で、千代の富士、双羽黒の2横綱と4大関を撃破し、「益荒雄旋風」を巻き起こした。阿武咲も、3横綱2大関と相対する九州場所で"師匠の再現"を期待されているが、「チャレンジャーの気持ちでしっかりぶつかっていきたい」と、臆することなく上位陣に向かっていくことを誓った。 

 5歳から阿武咲を指導してきた小山内監督は、「(阿武咲は)相手が強ければ強いほど闘志を燃やすタイプ。そういう意味で今場所は、かなり気合が入る場所だと思います。勝ち負けを考えず、思いっきり暴れてほしいです」とエールを送る。場所前の巡業では白鵬にぶつかり稽古で可愛がられ、稀勢の里は胸を貸すために阿武松部屋で出稽古を行なうなど、"明日の相撲界を担う力士"として目をかけられている。

「稽古をつけてくださった方に勝つのが、一番の恩返しだと思います」と阿武咲。1年納めの九州場所で、しこ名のように大きく開花するための戦いが始まる。

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