「カーリングの変態」本橋麻里の献身でつかんだLS北見の五輪キップ (2ページ目)

  • 竹田聡一郎●取材・文 text&photo by Takeda Soichiro

 実際に、今季の国内開幕戦である7月のアドヴィックスカップでは、吉田夕がゲーム中に左肩の違和感を訴えたため、本橋がスクランブル出場。安定感のあるデリバリーと、正確なスウィープで好リリーフを果たすと、試合後には「いつ、どのポジションで出ることになっても、準備はできていますから」と涼しげな表情で語った。

「なんでこの人はこんなにストイックにやるんだろう、こんなにできるんだろうと不思議になります。彼女は"カーリングの変態"だと僕は思っています」

 そう笑うのは、夫の謙次さんだ。本橋はリザーブになってもトレーニング量を落とさず、家事も育児もきちんとこなしているという。そこに、「フィフスだから」「母だから」といった妥協はない。本橋がそうした姿勢を若い選手に見せることで、「麻里ちゃんをリザーブに置いているんだから、恥ずかしいゲームはできない」と鈴木が決意したように、氷上の選手に緊張感と自覚が芽生えるのだ。

 そして、今回の代表決定戦では、ゲーム外での本橋の"献身"が勝利を呼び込んだ。

 カーリングのビッグマッチでは、開幕前にストーンの調整をする。石底の接氷面をわずかに研磨し、微妙なエッジを作ることで石の曲がりを生む狙いだ。それによって曲がりやすくなる一方で、石ごとに僅かなクセが生じることになる。

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