レジェンド葛西を超えて。日本男子ジャンプには「小林兄弟」がいる! (2ページ目)

  • 折山淑美●取材・文・写真 text&photo by Oriyama Toshimi

 その代わりに結果を出したのが、兄の小林潤志郎(雪印メグミルク)だ。1本目はこの日の平均風速よりやや強い0.39mの追い風ながら、130mを飛んで2位に7.6点差のトップに立った。そして、最終ジャンパーになった2本目は、追い風で前の選手たちが次々と失速するなかで、「少し緊張して、あまりいいイメージを持てなかったですが、思い切って飛んだ」というジャンプを見せる。少し風速が弱くなったことも幸いし、125.5mにまで飛距離が伸びた結果、逃げ切り優勝となった。

 グランプリの優勝は、2015年9月のアルマトイ大会以来。26歳の潤志郎は15年世界選手権にも出場した中堅といえる立場だが、昨シーズンのW杯出場は札幌大会を含めて8試合のみと、5歳下の陵侑の後塵を拝す状況になっていた。だが、「以前は飛ぼう飛ぼうと思い過ぎていたアプローチの意識を変えて、組むことに集中できていると思う。グランプリでは、なかなか結果が出せなかったですが、転戦中に形状の違うジャンプ台で練習し、そのなかでアプローチの感覚をつかみかけてきていた」と言うように、この日は追い風のなかでも安定した踏み切りができていた。

「前回優勝した時は、1本目10位からみんなが落ちてきての優勝でしたが、今回は1本目が1位で2本目もそれを守る、すごくいい終わり方ができたと思う。以前は練習でうまくいかなくても試合ではギリギリよくて、というのが多かった。今は練習で、いいジャンプができているところが違う。アプローチが本当に安定して、動きにつながるようになった」

 こう言う潤志郎は、陵侑が昨季のW杯フル参戦を果たしたことも含め、「悔しいことやうまくいかないことがたくさんあったんですが、それがあったからこそ今があるのだと思う」と前向きに捉えている。

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