「相撲部員は繊細です」。豪栄道を生んだ名門・埼玉栄を支える監督の愛 (3ページ目)

  • 松岡健治●文 text by Matsuoka Kenji

 だからこそ、申し合いが中心の練習では、いい相撲で勝った選手はすぐに上がらせる。大切なのは「選手それぞれの頭にいいイメージをインプットさせること」だという。

「例えば、書道家が2枚目に書いた字がよければ、3枚目を書く必要はないですよね。相撲もそれと同じです。練習でいい相撲が取れれば、それ以上やる必要はない。『もう一丁』はさせません。生徒を腐らせないようにすることに最も気を配っています」

 かつては厳しい指導で部員を率いた山田監督だが、今は細やかに気を使いながら部員と接する。練習で厳しく叱った部員に対しては、尞に帰ってきた際に「お帰り」と笑顔で声をかける。些細なことではあるが、「こういうことをしないとさらに落ち込んでしまう」からだ。

「練習で厳しく指導しようと思った時も、あらかじめ『今日は厳しくやるぞ』と伝えています。いきなり厳しくすると対応できなくなるので。あらかじめ言うことで、生徒に心構えを持たせないと、指導ができなくなってしまいますからね」

 今年で監督就任27年目だが、「27年間、一緒に生活しているといろんな子がいます。長く続けるのは難しいんですよ」と、生徒と向き合う試行錯誤の日々を明かした。

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