「相撲部員は繊細です」。豪栄道を生んだ名門・埼玉栄を支える監督の愛 (2ページ目)

  • 松岡健治●文 text by Matsuoka Kenji

埼玉栄高校相撲部の山田道紀監督 text by Matsuoka Kenji埼玉栄高校相撲部の山田道紀監督 text by Matsuoka Kenji

 練習時間は、朝夕合わせて3時間。「ウチは短いですよ」と監督自身が話す通り"短時間集中型"だ。しかし、就任当初は練習も長時間で、申し合いで50、60番は普通だったという。相撲部は徐々に実力をつけ、1992年に全国選手権で初優勝を果たすも、それからしばらく日本一から遠ざかることになる。その頃に山田監督が思い出したのは、日大時代の相撲部監督だった田中英寿理事長の教えだった。

「田中先生は、選手それぞれに合わせて、ちょうどいいところで練習を終わらせていた。調整と休養の取らせ方が素晴らしかったですね」

 恩師の指導を思い起こして練習方法を見つめ直し、「98年ぐらいから今のトレーニングを導入して、練習はいいところで上げるようになった」と振り返る。その成果は、1999年の2度目の日本一、2004年からの3連覇といった形で表れた。

 指導哲学について、山田監督は「同じ四股(しこ)でも、無理やり100回踏むのと、意味が分かった上で50回しっかり踏むのは違う。結局、人間は"脳みそ"なんです」と明かす。中学時代に全国でも名を馳せた生徒が入学する同校。連日、中学では経験したことのない強い先輩や同学年の選手と稽古をする。練習で負け続ければ、その経験が少なかった選手は、瞬く間に自信を失っていく。

「相撲は勝たなきゃ面白くないんですよ。ずっと勝ってきた選手ほど、心は繊細で神経質。強い子を潰すのは簡単なんです」

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