「こんな接戦は初めて」と言いつつ、
ツール圧勝のフルームが強すぎ!

  • 山口和幸●取材・文 text by Yamaguchi Kazuyuki
  • photo by AFLO

 このステージのフルームは肝心のゴール前で疲れを露呈して、わずかに遅れた。

「あの日は調子が悪かった」と後日回想しているが、フルームにとってピンチだったのはこの1回だけで、続くアルプスでは完全に復調してきた。

 第14ステージ。この日のゴールであるロデーズは山岳ポイントでないながらも、ゴール前が急坂となっていた。そして今度は、マイヨ・ジョーヌのアルが最後の上り坂で力尽きる。

 フルームはこのとき6秒遅れの総合2位にいて「まったく期待していなかった」というが、チームからの無線で「プッシュ! プッシュ!」という指示を聞いた。アルが脱落しているのでダッシュしろ、という意味だ。激坂を全力で駆け上がってアルに25秒差をつけ、結果、フルームがふたたびマイヨ・ジョーヌを獲得した。

 アルプスの山岳ステージでは、フルームはほぼ完璧なレース展開を見せつけた。自分から攻撃を仕掛け、総合2位以下のライバルに付け入る隙を与えなかった。そして最終日前日の個人タイムトライアルでも実力どおりのタイムを記録し、パリにマイヨ・ジョーヌを着用したまま凱旋することになる。

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