落車が続出のツール序盤。王者フルームはマイヨ・ジョーヌを守れるか (4ページ目)

  • 山口和幸●取材・文 text by Yamaguchi Kazuyuki
  • photo by A.S.O.

 まずは序盤の下りで、フルームに続いて12秒遅れの総合2位にいたトーマスが落車して骨折、そのままリタイアとなった。フルームは後半戦のピレネー、中央山塊、アルプスにおける最高のアシスト役をここで失うことになる。

 さらにこの日の最後の山岳で、フルームにメカトラブルが発生する。フルームはあわてて後続に追従するチームカーを呼び、スペアバイクと交換しようと片手を挙げてアピールした。だがその瞬間、14秒遅れの総合3位にいたアスタナ・プロチームのファビオ・アル(イタリア)が掟破りのアタックを仕掛けたのである。

 このときフランスのテレビはCMに入っていて、常時中継をモニタリングするディスプレーだけがその模様をとらえていた。現地のサルドプレスで映像スタッフが「あー、フルームがメカトラだ!」と声を上げると、数百人の記者が前方のモニターにめがけて駆け出した。

 CMが終わって中継が再開し、アルが走る集団にフルームの姿がないことを確認すると、「どうしたんだ?」という声が口々に上がる。そして、アルのアタックした瞬間がリプレーで再生されると、そこにいた全員が「わー!」とどよめく。映像ではフルームが背後の審判車に手を挙げてアピールし、その直後にアルがアタックをしたことが明らかだったからだ。「スポーツマンシップに欠けるね」。アルの母国イタリア人記者以外、サルドプレスではこのような意見が多くを占めた。

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