【月刊・白鵬】ハートに火をつけ「鬼になった横綱」が1年ぶりの優勝 (2ページ目)

  • 武田葉月●構成 text&photo by Takeda Hazuki

 場所後は、ケガの治療と肉体改造のため、母国・モンゴルへ渡りました。断食、軍隊式トレーニング、ヨガなどを精力的にこなして、とことん自分を追い込んできました。休場中、師匠(宮城野親方)から「横綱、昔みたいに"鬼"にならなければいけないよ」と、言葉をかけられたことが心に響いたのもあります。

 追いつめて、追いつめて、"鬼"になる――。

 人々の関心が稀勢の里に集中するなかで、私は冗談っぽく「白鵬も忘れてもらっちゃ、困るよ」などと言っていましたが、事実「このままでは、本当に白鵬という存在を忘れられてしまうのではないか......」、そんな危機感に駆られていたこともありますね。

 モンゴルでのトレーニングで心身ともにすっきりした私は、春巡業の後半から巡業に帯同し、土俵上での稽古も重ねました。次第に調子が上向いていくのが、自分でもよくわかりました。

 迎えた夏場所、初日から稀勢の里が嘉風に、鶴竜が御嶽海に敗れる波乱の幕開けとなりました。すると、左足を痛めた鶴竜は5日目から休場。負傷した左腕の状態が思わしくない稀勢の里も10日目までは6勝4敗と踏ん張っていたものの、11日目から休場してしまいました。

 私とともに全勝を続けていたのは、もうひとりの横綱・日馬富士。10日目までは熾烈な争いを展開してきましたが、彼も11日目に1敗を喫して、久しぶりに私が単独トップに立ちました。

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