2017.06.02

兄弟子の逆転優勝に号泣していた
新大関・髙安。次は自分が賜杯を抱く

  • text by Sportiva
  • photo by Kyodo News

 その夏場所で、稀勢の里は左腕の負傷の影響で11日目から途中休場となったが、横綱の責任を果たすために出場に向けて調整する姿、勝っても負けても懸命に土俵を務める姿は大きな刺激になった。稀勢の里の想いを背負った髙安は11勝を挙げ、3場所で34勝と文句なしで大関昇進を決める。千秋楽後の打ち上げパーティーで、稀勢の里から「おめでとう」と声をかけてもらった。短い言葉だったが、そこには弟弟子にしか分からない「重さ」があった。

 髙安は夏場所を振り返り、「勝負の場所だった。ずっと緊張感があったので解放されてホッとしている」と重圧に打ち克った充実感を口にした。また、大関昇進には「入門した時はまったく想像できなかった。信じられない気持ちが強いですね」と感慨にふけった。2005年春場所で初土俵を踏んだ後、猛稽古と部屋での生活になじめず部屋を脱走し、何度も茨城・土浦の自宅に帰ったこともある。そんな経験を持つ男が漏らした言葉は、おそらく本音だろう。

 苦しい時期を乗り越えた髙安は、新十両、新入幕、新三役すべてで、平成生まれの力士として初昇進を記録。大関昇進こそ照ノ富士(25歳・伊勢ヶ濱部屋)に先を越されたものの、日本出身では大関一番乗りだ。新大関としての目標は「優勝です」と、2006年夏場所の白鵬以来となる新大関Vを狙う。稀勢の里は大関になってから横綱昇進を果たすまでに31場所かかったが、髙安が名古屋場所で賜杯を抱けば、年6場所制となって以降では北の湖、千代の富士、朝青龍の所要3場所を上回る、大関在位2場所での横綱昇進の夢も見えてくる。