2017.06.02

兄弟子の逆転優勝に号泣していた
新大関・髙安。次は自分が賜杯を抱く

  • text by Sportiva
  • photo by Kyodo News

 実際のところ、尊敬する稀勢の里の存在が、髙安を大関まで導いた側面はあるだろう。「茨城県出身・中学卒業後に入門」と、自身と同じ道を辿る髙安を本当の弟のように目をかけ、稽古場では胸を出し、土俵を離れれば友人のように向き合った。厳しい指導で知られる先代の鳴戸親方(元横綱・隆の里)の稽古から逃げることなく、真正面から努力し続ける兄弟子の姿は常に髙安の目標だった。

 2011年の九州場所を前に先代の師匠が急逝してからは、稀勢の里と2人で切磋琢磨してきた。兄弟子の横綱への道は険しかったが、周囲から批判を受けても腐らずに稽古を重ねて悲願の初優勝。横綱を昇進した直後に、稀勢の里は「髙安のおかげで横綱になれた。次は髙安を大関にすることが自分の役目」と話してくれた。それが何よりも嬉しく、大関昇進への気持ちをさらに強くした。

 新横綱誕生に日本中が沸く中、稀勢の里は春場所で左腕にケガを負いながら劇的な逆転優勝を飾る。支度部屋でその姿を見た髙安は人目もはばからず涙を流し、「いい結果になって感動しました。まさかの展開にこみ上げるものがありました」と体を震わせた。鋼のような精神力が肉体を上回ることを、身をもって教えてくれた稀勢の里。だからこそ、髙安は夏場所の前に「全勝して大関に昇進したい」と自らに高いハードルを課し、重圧に打ち克とうとしたのだ。