【月刊・白鵬】大盛況の夏場所、横綱が注目する「2人の若手力士」 (3ページ目)

  • 武田葉月●構成 text&photo by Takeda Hazuki

 ただ、それ以来、何か目標を失ってしまったような、そんな心境に陥ってしまったことは確かです。なんとか新たな目標を掲げてやってきましたが、最多優勝更新を遂げる前と後では、何かが違ったような気がします。

 そうした状態で不甲斐ない結果が続いたのもあるのかもしれませんが、横綱になって1年間も優勝から遠ざかってきたことはありません。この事実は、悔しさ以外の何物でもありません。

「白鵬もここにいるんだ!」「優勝することで自分の存在感を示さなければいけない」――そうした思いが、私の気持ちに火をつけたのだと思います。だからこそ、この場所前は自らを追い込み、ここ最近にはなかったほどの稽古を積んできました。

 迎えた夏場所、9日目を終えて私は9連勝。久しぶりに好調を維持できているので、この状態をなんとか保って1年ぶりの賜杯を手にしたいものです。

 一方、いい稽古をさせてもらった高安もここまで8勝1敗と好調。平成生まれ初の関取でもある高安の大関獲りはなるのか、夏場所での興味は膨らむばかりです。

 この夏場所、実は私が注目している若手力士がいます。今場所から新十両に昇進した、貴乃花部屋の貴源治(たかげんじ/20歳)です。

 貴源治は、双子の兄・貴公俊(たかよしとし)とともに、地方巡業で初っ切り(しょっきり)をしていたことでも知られています(※貴源治の十両昇進で、先の春巡業を最後にコンビは解消されることになった)。初っ切りとは、主に相撲の禁じ手などをユーモアたっぷりに演じる、巡業の定番メニューです。ふたりの息の合った初っ切りは、本当に見事なものです。

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