【月刊・白鵬】大盛況の夏場所、横綱が注目する「2人の若手力士」 (2ページ目)

  • 武田葉月●構成 text&photo by Takeda Hazuki

 私は稀勢の里の弟弟子で、この夏場所で大関獲りを狙う関脇・高安に、あえて胸を出しました。普段から稽古熱心な高安は、体中砂まみれになりながらも、私の胸に何度も何度もぶつかってきました。高安の重い当たりを受けながら、私は相撲の実戦感覚が戻ってくるのを感じました。お互いにとって、かなり実のある稽古だったのではないかな、と思っています。

 横審のあとは、夏場所での対戦が予想される力士の所属する部屋を中心に、積極的に出稽古をこなしました。番数や、その質を含めて、ここ最近にはなかったほど、充実した稽古ができました。日を追うごとに体が張ってくるのが自分でもわかりましたから。

 ここまで追い込むのには、理由があります。

 私が37回目の優勝を果たしたのは、昨年の夏場所のこと。続く名古屋場所(7月場所)で足を痛めると、秋場所(9月場所)では横綱になって初めての休場を経験。以降、足の負傷の影響もあって、ずっと優勝から遠ざかっています。

 その間、日馬富士、鶴竜らが底力を見せて、年が明けて初場所(1月場所)では大関・稀勢の里が初優勝。横綱昇進を果たしました。そして、春場所から4横綱時代が到来しました。

 ひとり横綱時代、モチベーションを保つのが難しい状況の中、私は尊敬する横綱・大鵬関の優勝32回というのを目標に掲げ、そこに向かって懸命に戦ってきました。当初はとてつもない目標だと思っていたのですが、横綱として目の前の一番、一番に集中し、がむしゃらにやってきた結果、ついに大鵬関の記録に追いついて、追い越すことができました。

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