ボルダリング・ライバル物語「同い年のスター、楢崎智亜を追いかけて」 (5ページ目)

  • 津金壱郎●文 text by Tsugane Ichiro  佐野美樹●写真 photo by Sano Miki

石松がライバル視する楢崎智亜。今回のワールドカップで2位に石松がライバル視する楢崎智亜。今回のワールドカップで2位に
「智亜はフィジカルが強い。でも、大晟も東京に来た当初からフィジカルが強かったんですが、この1年でさらに強くなりましたね。だから、抱え込むような大きなホールドを得意にしているし、傾斜がキツくなるほど強さを発揮します。弱点は緩傾斜。本人も自覚しているけど、渡部桂太くんのように足にしっかり乗り込んだり、体のポジションを少しずつ移動したりする動きは苦手ですね。

 ただ、大晟本人はメンタルが弱いと言ってるけれど、難しい課題ほど登るし、勝負強い。苦手な部分を克服していけば、必ずもっと上に行くでしょう」

 杉田の言う石松のフィジカルの強さが発揮された課題が、決勝での第4課題。左側にある巨大なホールド(手掛かり、足掛かり)へ飛び移り、それを両手で挟んで止めるムーブだ。ダンボールを両手の平で挟むようにしてホールドを止める。腕力だけではなく、体の中心からパワーを絞り出さなければならない課題を、石松は3度目のトライで完登した。

「全部登れないで終わったら来年につながらないので、最終課題を登れたのはよかったです。智亜も渡部さんも登れなかった課題を登れたというのが自信になりますし、自分の得意な部分がBWC決勝という高いレベルの課題にも通用する手応えが得られたのは大きかったです」

 フィジカルを特長としている楢崎と石松だが、クライミングスタイルは大きく異なる。身長170cmの楢崎は、体に備えたバネを生かし、俊敏な身のこなしで素早くクライミングウォールを駆け登っていく。その姿はまるでスピード種目のアスリートのようだ。一方、身長172cmの石松も、高校半ばまで165cmほどだったこともあって、ランジ(ジャンプ)は得意にするが、楢崎とは対照的にオーソドックスなスタイルで登る。

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