ボルダリング・ライバル物語「同い年のスター、楢崎智亜を追いかけて」 (4ページ目)

  • 津金壱郎●文 text by Tsugane Ichiro  佐野美樹●写真 photo by Sano Miki


「これまでの大会を振り返ったら予選を上位通過した時ほど、準決勝で調子が落ちた。だから、今回は予選で入れ込みすぎないように心がけました。予選や準決勝のベルコン(※2)は、これまで登っている間も、待っている間も集中を切らさないようにしていたけど、今回は出番を待つ間はリラックスするようにした。それがいい結果に繋がったと思います」
※2 選手たちは予選(5課題)、準決勝(4課題)では課題に順次取り付いていくが、1課題目が終わったらすぐに2課題目を登るわけではない。制限時間ごとに「登る」「休む」を繰り返しながら競技を行なうさまから、ベルトコンベアー方式、通称ベルコンと呼ばれる。

 鬼門の準決勝は、1課題目が石松の苦手なタイプだったが、2トライ目で完登すると調子の波に乗った。2課題目、3課題目を一発でクリアし、4課題目こそ完登を逃したものの3位で決勝に進出した。決勝の競技順は楢崎の直後を石松が登ることになった。

「決勝進出が決まったときが一番うれしかったですね。決勝は純粋に楽しもうっていう気持ちで臨んだら、自分でもびっくりするくらい集中できて、気負いなく臨めました。出番を待っている間も、歓声で智亜は登ったなぁと思ったけど、変にプレッシャーを感じたりはしなかった。決勝の1から3課題目までは全然ムーブが浮かばなくて、頭の中が?マーク状態でうまく切り替えられなかった。でも、集中力は切れなかったし、メンタルも挫けなかった。BWCに出るのは今回が2度目で、決勝は初めて。これは舞台に慣れれば対応できると思っています」

 石松の特徴を勤務先のジムの上司であり、第4回BJC優勝者の通称・オビこと杉田雅俊氏は次のように解説する。

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