【月刊・白鵬】横綱が語る、稀勢の里の激闘と「浅田真央の引退」 (4ページ目)

  • 武田葉月●構成 text&photo by Takeda Hazuki

 その後、1年間の休養を挟んで復帰。次の五輪を目指していたのでしょうが、もしかしたら彼女は、彼女の代名詞であるトリプルアクセルを、自信を持って跳べなくなってしまったのかもしれません。

 ともあれ、現在26歳の彼女は、2006年の全日本選手権で優勝しているんですよね。つまり、その時点で日本一の選手です。それから、2008年には世界選手権で優勝し、2010年のバンクーバー五輪では銀メダルを獲得。前述のソチ五輪で2度目の五輪出場も果たしました。その間、全日本選手権では2006年から2015年までの10年間(2014年は休養中)で6度の優勝を飾って、世界選手権でも3度頂点に立っています。

 実に10年もの間、彼女はトップを張ってきたんですよね。そういう意味では、引退のタイミングは常に考えていたのではないでしょうか。

 私も同様です。彼女の引退を聞いて、22歳で横綱に昇進したときのことを思い出しました。

 横綱という地位は、一度昇進したら降格はありません。要するに、後戻りはできないわけです。結果が伴わなければ、辞めなければいけないという厳しい地位です。

 ですから、当時の私は一日、一日を、横綱として務めることで精一杯でした。5年後の自分を思い描くこともできませんでした。25歳になったときでも、「きっと、29歳か30歳ぐらいで引退するんだろうな......」と漠然と考えていたくらいです。それからすると、32歳になった今でも現役を務めているということは、自分でも不思議なくらいなんですよ。

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