内村航平「もう地獄ですね」。薄氷の10連覇は東京五輪への吉兆か (3ページ目)

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi
  • 築田純●写真 photo by Tsukida Jun

「予選では、久々の試合で期待に応えることができずに申し訳なかったですが、(決勝の)朝起きた時には集中できそうな感じがして、今日こそ自分の演技をしようと思いました。ただ、下の世代の選手も健三以外はミスがあったから、それがなければ順位がどうなったかわからない。彼らや佑典がグイグイ来ているのはわかったので、そのヒリついた感じが試合勘を取り戻してくれたのだと思います。最後は疲労に負けた感じがしましたし、鉄棒は今までで一番悪いんじゃないかという演技だったので途中で笑ってしまいました」

 こう話す内村の表情には疲労が滲み出ていた。3位の白井は0.2点差で4位の谷川も0.35点差という僅差の結果。白井は「鉄棒は自分の中では安心してできる種目ではないから、0.05点リードしているのを見て逆に気持ちが引き締まりました。平行棒のあとに航平さんと佑典さんと話していて、『届かないですよ』といったら、『どうせなら健三に勝ってほしいな』と言われて......。航平さんに勝つにはまだ早いと思っているし、上の2人の壁は厚い。僕たちの世代が元気だという印象を周りの方にも与えられたし、世代交代も近いのかなと思わせるような試合もできたと思うので、僕たちなりに焦らせるような試合はできたと思う。やっと航平さんの足元に手が届くところまで来たのかなと思います」と笑顔を見せる。

 日本体操協会の水鳥寿思(ひさし)男子強化本部長は、「若い世代がこれから東京五輪に向けて、台頭してくるだろうと予感させる大会になったと思います」と今大会を総括した。

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