五輪新種目ボルダリング。10代中心の中、「30代」が挑み続ける理由 (3ページ目)

  • 津金一郎●文 text by Tsugane Ichiro  佐野美樹●写真 photo by Sano Miki

BJCでは準決勝まで進出した川端選手BJCでは準決勝まで進出した川端選手
 川端は初出場した一昨年のBJCで25位、昨年は申し込み段階で落選。今回は12月に行なわれた予備予選に出場して38選手中4位で本戦の出場切符をつかみとり、本戦は準決勝に進出した。「準決勝の課題は、これまで味わったことのない体のすべてが持っていかれるレベルで、全部の力が足りなかった。年齢的にBJCに挑める回数は限られているので、1年をすごく大切にしながら、背水の陣的な気持ちで挑んでいきたい」と、すでに次を見据えている。

 中野は川端とは対照的に、「いまはエクストラステージという感じですかね。スポーツクライミングで目標にしていたリードでS級、ボルダリングでA級の日本代表を達成したので」という、一歩引いた視点でスポーツクライミングを捉えている。

 広島のクライミングジム・セロで正社員として働きながら、リード種目の国内第一人者として世界で戦ってきた。2015年にはリードW杯フランス・ブリアンソン大会で2位になるなど、リードでW杯年間10位。ボルダリングでもW杯中国・海陽大会で6位に入ったことで、それぞれの目標を達成した。

 リード、ボルダリングともに日本代表にはS、A、Bの順で格付けがあり、S代表はその年の1月1日時点でのW杯ランキングが10以内、A代表は前年W杯で決勝進出という条件がある。S代表やA代表を目指すには、ボルダリングなら、まずBJCで上位に入り、W杯出場権を得られるB代表にならなくてはならない。ただし、B代表は海外のW杯大会への遠征費は自己負担になる。親の援助がある10代選手と異なり、社会人選手ではこの障壁がネックになり、海外でのW杯出場を諦める選手も少なくない。

 中野は家族やジムの協力でそれを乗り越えたが、再びそこを目指すには躊躇(ためら)いがあるのかもしれない。岩場をメインにした活動に移行する道もあるなか、それでも大会に出場する理由をこう話す。

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